緑色①

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 なんとなく、信用できない気持ちでタクミと共に電車に乗った。変態はおいておいて、タクミやたらとイケメンなのでガラスに映ったタクミと天菜を見ると劣等感を覚えて居心地が悪かった。  タクミがなんと言おうと二人は付き合っていないし、周りからも絶対に付き合っているとは思われないだろう。  隣に居るだけで天菜の心をバキバキにすりタクミは確かにドSだ。泣いてたまるか、心が折れてたまるかと腹を立てていたら下りると宣言されて知らない駅へと下り立った。  新幹線などは止まらないが、比較的大きな駅だった。ホームに下りた時、仄かにいい香りがして鼻を引くつかせた。出汁のいい香り。仕事が終わったらこの匂いのものを食べて帰ろうと心に誓った。 「依頼人は女性。その人の家まで行って除霊するだけな」  今回は一応これからどうするかを話してくれたタクミ。 「私に寄生しなくても除霊出来るんでしょ?」 「まあな。ただ、顎が外れそうな恵方巻を食べなきゃならないところを、細巻きくらいの細さになったら楽だろ?」  隣を歩くタクミに首を傾げ「それくらい楽になるの? 私がいると」と聞いてみた。 「細巻きよりもっと楽かもな」  今日のタクミは変態度が低いので話しやすい。これではタダのイケメンだ。
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