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イケメンだからなのか上からの物言いで、しかも結局強引についてきた。話がまだ出来てないからカラオケの間待ってやるということらしいが、待ってもらわなくていいし、あんなこと二度とゴメンだ。
駅に戻るとアユちゃんが本当についてきたイケメンに口が半開きになっていた。
「え? え? まじでカレシできたの? 何にも言ってなかったよね? 昨日まで」
それに天菜が答えるより前にイケメンが即答した。
「運命の相手だったからね。天菜の中にはい──」
「黙ってイケメン!」
またそうやって卑猥なことを言おうとする。一応、口を噤んだがちょっと不満そうだった。
「イケメンって。天菜ってカレシのことそんな風に呼んでるの?」
「タクミって恥ずかしくて呼べないらしいよ? アユちゃんもタクミでいいからね」
イケメンゆえのコミュ力なのか、持って生まれた才能なのか。いや、持って生まれたイケメンだからこのコミュ力なのだろう。
タクミは初対面のアユちゃんとの距離が近い。天菜に至っては初対面なのに躊躇なく入って(?)きた。恐ろしい人種だ。どちらかというとコミュ障の天菜には関わりたくないタイプの人間だ。とはいえ、アユちゃんもどちらかに分類するならコミュ力高めで、天菜はそんなアユちゃんに引っ張られるように仲良くなり現在にいたる。
要するにコミュ力高い二人にコミュ障気味の天菜が勝てるわけもなく、二人はどんどん仲良くなるし、有難いのかなんなのか天菜をないがしろにすることなく巻き込んでいく。
カラオケで驚いたのはタクミがやたらと歌が上手いことだった。いわゆるウィスパーボイスで優しく歌い上げるから、アユちゃんがもう溶けて溶けて大変なことになっていた。
「え、マジ上手くない? これも歌える? 歌って」
なるほど、バラードを歌ってやるというのはタクミからすると天菜へのプレゼントだったのかもしれない。とにかくヤバい歌声なのだ。
「歌えるよ。入れといて。てか、二人は歌わないの?」
タクミは間奏の間に一応アユちゃんと天菜に聞いてきたが、アユちゃんがここで「いい! 私らしょっちゅう来てるし歌わなくていい!」と力説する。そして最後に天菜に「ね?」と同意を求めた。
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