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確かに、アユちゃんの気持ちはわかる。タクミが普通のイケメンでこんなに甘い声で切ない恋を歌ったら、いろいろかなぐり捨てて抱きしめたくなりそうだ。
ただ、天菜はこのイケメンが本当に残念なことを知っていて、もうそれはそれは無念だった。タクミが凡人でただのイケメンなら、運命の人とか言われた時点で天菜だって心を鷲掴みにされていたはずだ。ほんと、はじめから変態で良かったと思う。好きになってからこの寄生虫に本性を表されたんじゃたまったものじゃない。
タクミはアユちゃんの心を掌握しつつ、カラオケ代を全額支払ってくれるという気前の良さまで見せた。
「ゴメンな、ちょっとこれから天菜と用事があるんだ。また今度遊ぼ」
アユちゃんは残念そうではあったが、天菜に「今度タクミとの話を聞かせてね! 出会いから全部」と、宣告し手を振り去っていった。
「カワイイじゃないか。アユちゃん」
確かにアユちゃんは天菜よりカワイイ。それは誰もが認めるところだ。アユちゃんだけは身長が女性の平均を上回っていることを気にして、小さい天菜をカワイイと褒め倒すが……。
「じゃあ、アユちゃんの中に入ったらいいと思う。あんまり迷惑かけないようにね。じゃあ、短いお付き合いでしたが私もこの辺で」
今日の出来事を綺麗さっぱり忘れたい。きっと夢だ。これはリアルすぎる夢なのだ。
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