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第一話
わかった。白状するよ。僕が掟を破って未来へ行った理由を。
それを話す為にはまず、僕の昔話を聞いてもらわなきゃならないから少し長くなっちゃうんだけど。
実は僕、人の未来が見えるんだ。8歳の時に急にそうなってね。正確に言えば最初は"見える"というより"流れ込んでくる"という感じだったかな。
全然信じてないみたいだね。でも本当なんだよ。一番最初に僕が見たのは母の未来だった。
8歳の誕生日を迎えてから5日目の朝。いつものように起こしに来てくれた母の顔を、眠い目をうっすら開いて見た瞬間に、どっと膨大な何かが僕の頭の中に流れ込んできた。
数秒のことだったと思う。そのとても短い間にとてつもなくたくさんの映像が、僕の頭の中でパッと映っては一瞬で消えていった。
その時は何が起こったのかも、それが何なのかもさっぱりわからなかったけど、とにかくすごい情報量で頭が破裂しそうな感覚だった。少しの間気絶していたと思う。
その日から誰に会ってもその現象が起こった。気絶こそしなかったけど、その度に頭が壊れそうになって初めはすごく苦しかったのを覚えてる。
でも子供だったおかげもあるのかな。人間の順応力ってのはすごいものでさ。だんだん慣れてきてその現象を受け入れられるようになった。一度見た相手の映像なら、二度目からは拒否できることもわかった。
それだけじゃない。流れ込んでくる映像を気になるところで止めたり、戻したり、繰り返したり、自由にコントロールできるようになっていったんだ。そしてそのうちに気づいた。この映像は相手の未来の姿で、僕は一人一人の未来を見てるんだってことに。
えっ、君が何歳まで生きられるか未来を見てくれって?…悪いけど、君の未来は1週間くらい先までしか見えてないな。残念ながらどこまで先の未来が見えるかは人それぞれ違って、僕にはコントロールができないんだ。年老いて死ぬ時の姿まで見える人もいれば、3週間先くらいまでしか見えない人もいる。あれから12年あれこれやってみたけど、そこだけは未だにどうにもできなくてね。
そんなふうにすこし制限はあるけど、僕は自分以外の誰の未来だって見ようと思えば見ることができた。僕自身の未来が見られなくても身近な人の未来を覗けば映り込んでいる情報から自分のことがわかるんだ。おかげで僕はほとんど後悔のないとても有意義な人生を送ってきたよ。
みんな未来に憧れてタイムマシンのパイロットになりたがるでしょ?僕はそんなこと思ったことがない。だって必要ないんだもん。僕はみんなが知りたくて知りたくてたまらない未来を知ってる。未来を手に入れた特別な存在だと思ってずっと生きてきた。
だけど3ヶ月前「彼女」に出会ったことで、そんな考えも、そして僕の運命さえも大きく変わってしまった。
「彼女」の名前はミアといった。
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