序章

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序章

 2XXX年。ある男が起こした事件により生じた大きな時空の歪みは、過去を書き換え多くの来るべき未来を消滅させた。大罪人ジャック・ラ・ルーヤを討ち、正しい「時」を取り戻す為に、政府が起こした聖なる戦争は、、、、 「ねぇ、なにやってるの?」 「大昔の時代のことを、ちょっと昔の時代の人がまとめた記事があってさ。」 「うわ、また文字読んでんの?プットしちゃえば一瞬で理解できるのに。」 「俺あの感覚苦手なんだよ。勝手に流し込まれるより一文字ずつ自分のタイミングで読み取るほうがいい。昔あったっていう紙でできた本で読めたら最高なのになぁ。」 「そんなに過去のものに触れたいなら政府のタイムグライダーでも目指せば?」 「やだよ、あんな見せ物みたいなの。」 「それはわたしも同感。服装も変だし。」 「あーあ、ジャック・ラ・ルーヤと政府があんな戦争しなけりゃ俺らだって昔の人達みたいに自由に過去や未来を旅できたかもしれないのにさ。」 「なに言ってんの。"時を守るための戦争"は必要な戦いでしょ!だってルーヤが時空を歪めて過去を書き換えたせいで1000人以上の偉人が消滅したっていうんだよ!本来語り継がれるべき偉大な人達を、歴史上に存在すらしてなかったことにした大罪人は倒さなきゃでしょ!」 「それには諸説あるよ。結果的にはそういうことになったけど、ルーヤはただ愛する人たちの悲惨な運命を変えたかっただけだったとか。」 「重要な歴史が捻じ曲げられただけじゃないわ。ルーヤのせいで時の流れがめちゃくちゃになって、大きな戦や戦争は倍に増えたし、本来死ぬはずじゃなかった3倍以上の人が命を落としたって。私の中ではルーヤは人類史上最悪の極悪人よ。」 「君たちが学んだことが本当に事実ならね。だけど今あたりまえに知ってる情報だってどこまで正しいかわからないんだ。歴史を都合よく書き換えて壊していたのは実は政府で、それを元に戻そうとしていたのがルーヤだって話もある。」 「そうなの??でも私そんな話一度も聞いたことない。…じゃあルーヤは本当はいい人だったのかもしれないってこと??だけど、そんな昔のことなんて誰も、うっ…!」 「どうした?大丈夫?」 「脳の回路が…どこかショートしたみたい。ごめん、ちょっとゼノプラグ借りていい?」 「はい、どうぞ。使ったことないからちゃんと繋がるかわからないけど。って、もうコネクトして仮眠状態か…。なら通信通信っと。」 ➖➖➖父さん聴こえてる?この時代の情報もかなり汚染されてる。ルーヤの名前が出ただけでみんなすごい拒絶反応だったし、間違いなくこの時代でも極悪人として刷り込まれてるね。しかも政府による歴史の書き換えの話に触れたら、数秒足らずで脳のどこかしらの回路が遮断されるようになってるみたい。結構手が混んでるよね。 「そうか。そっちの時代もだめだったか。」 ➖➖➖なぁ本当に俺たちの味方についてくれるような時代なんてあるのかな。歴史自体が完全に変わってしまってるのに、情報が汚染されてないことなんてありえるの? 「ありえるさ。時を歪めて過去をどんなに変えても未来永劫の全てを書き換えることは絶対にできない。それに歪んで生じたひずみから少し離れた所には本当の事実が多少は残っているはずだ。時空自体も元に戻ろうとする力を多少持っているものだしね。大丈夫、勝機は大いにある。」 ➖➖➖…了解。じゃそっちに戻るね。 「ねぇ…あなた誰?ユタ…じゃないよね?」 「あっ起きたんだ。でもごめん。もう行かなきゃだから説明できないし、名前も名乗れないんだ。ただひとつだけ忠告してあげる。"プット"とかなんとかいうやつはなるべくやらないほうがいいよ。あれは脳まで汚染する。あと、これはただのお節介だけど人に借りた"プラグ"とやらを安易に脳に繋ぐのはどうかと思う。危険だし最悪死ぬよ。気をつけて。」 「どういうこと?あなたほんとに誰なの?」 「じゃあまた。って二度と会うことはないと思うけど。元気でね!」 「あーあ、今回も収穫なしか。時を行き来するのも疲れるのにさ。父さんの方もどうせ全部だめだったんでしょ?」 「あぁ。だが焦っても仕方がない。あまり無理しすぎるなよ。」 「無理っていうか、俺は早くこの戦いを終わらせて普通に暮らせるようになりたいんだよ。時の歪みが元通りになって、全ての時代に真実が戻るまで俺達ずっとこうなんでしょ?」 「そうだな。だがお前が俺と同じものを背負う必要はないんだから、辞めたいというなら元の時代へ戻ってもいいんだぞ?」 「戻ったって地獄しかないじゃん。それに辞めたいとか言ってないし。まぁ死なない程度に頑張るよ。」  一万年先まで讃えられてもいいくらいのヒーローは今、全時代に憎まれ嫌われる大罪人になっている。俺たちは歪んだ「時」を元に戻し、全ての時代に真実の過去を戻すため、そしてルーヤが着せられたとんでもない汚名を返上するために、日々奔走してるってわけ。  英雄に罪をなすりつけるなんてクソみたいなやつらも、もちろん全員捕まえて牢屋にいれてやらなきゃね。  もしかして俺がルーヤだと思ってる?そうだとしたら残念ながらそれはちがう。俺も父さんもルーヤじゃないよ。俺のことはまた機会があれば話すさ。  それより気をつけて。君が知ってる歴史は、過去は、すでに誰かによって書き換えられたものかも知れない。君の時代の誰もが知ってる歴史上のヒーローは本当に正義だったのか。極悪非道な人物は、本当に全員悪いやつだったんだろうか。  あたりまえに与えられている情報をどうか鵜呑みにしないでほしい。次に書き換えられるのはもしかすると君の過去かもしれないんだから。
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