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「告られてたから、返事するために一緒に帰ったの」
なんだか照れくさそうにも、膨れているようにも、落ち込んでいるようにも見える表情で俯いている。女子ってこんな表情にもなれるのか。
「でも、付き合ってないってことは…」
彼氏いないと聞いたのに、確かめたくなる。確信が欲しくなる。ゲスいやつだと、自分でも思う。
「うん、断った」
心無しか顔が曇って見える。断ったことを気にしているのか?
「そういうことだからさ、おねがいします!」
"だから"引き受けた、と思われたくないという思いもあったが、この流れでは仕方ない。断りづらいし。
「分かったよ」
「ほんと?ありがとう」
途端にパッと明るい笑顔になる。俺騙されてないかな。
そんなこと思っていると、扉の向こうで誰かが歩いている音が聞こえてきた。こちらへ向かってるのかもしれない。
とりあえず、今の状況は見られるとまずい、って訳でもないけど、色々と面倒くさいのは確かだ。
明日、よろしくね
同じこと思ったのか、そういって、いおらは慌てて自分の部屋へ戻って行った。
ほぼ入れ違いのタイミングで母親が扉を開けて入ってくる。
「今誰かと喋ってた?」
「ううん、誰とも?」
かぶりを振る俺を訝«いぶか»しげに見ていたが、
「そう」
と首を傾げながらも出ていった。
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