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「戸森と連絡がつかない」  開店前にお店へやってきた伊織が開口一番にそう言ったのは、その一週間とちょっと後だった。戸森が会社に行ったまま、連絡がつかなくなったのだと。 「戸森のお袋さんが戸森に最後に会ったのは四日前。それから、会社から出勤していないという連絡をもらって、お袋さんは手あたり次第、知り合いに電話してるらしい。俺にも昨晩、電話がきたんだ」 「探してもらえないのかな、警察とか……」 「成人した大人の捜索は基本してもらえないだろう。明らかに事件性がない限り」 「……青子は? 青子にも聞いてみる。戸森から連絡がないか」 「俺も青子にはメッセージしてみたけど。心当たりのあるところ探してみる」  伊織は慌ただしく店を出ていく。その背中を見送ってからすぐに青子へ電話をかけるがつながらない。グループチャットではどんな些細な事でもすぐに反応して返信していた戸森。その戸森が、連絡が来ているのに何も返さないというのは考えにくいことだった。考えたくはないが、連絡できない状況に陥っているか、もしくは何か事情があって自分から連絡を断っているのか――。  青子から折り返しがあったのはちょうどお昼休憩中で、この前の公園で撮影中だというので、サンドイッチを持って訪ねた。 「この前は突然帰っちゃってごめんね」  スーパーで、不倫相手の三上と一悶着あってから、ちゃんと話せていなかった。一悶着、といっても、私はただ傍観していただけだったけれど。 「ううん、こっちは大丈夫だけど、青子は、平気?」 「うん……実はあのあと、三上さんとはすぐ別れたんだ。私も結構きつくなってきたなって思ってた頃だったし、それに……」 「それに?」
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