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 図書室はインクなどの懐かしい匂いで充満していた。 「あったあ!」  青子が大きな声で叫ぶように言う。 「うっわ、やっば。懐かしーっ」  戸森が青子の横ではしゃぐ。広げるとバラバラと封筒が落ちてきた。 「まさかそのまま残ってるとは。図書委員が仕事してない証拠だな」  戸森がいたずらっぽく笑うのにつられてみんなも笑みを浮かべる。  まずは青い封筒を拾い上げ開いていく。   「えーっと、凛のは『大学に受かりたい』、伊織は『母親に家を買ってあげる』。ふむふむ。こんなこと書いてたのか。ってか凛はめちゃくちゃ短期的な目標じゃん」  青子が笑いながら言う。 「あの頃は私にとってそれが全部だったからね」  陽向はこの間言っていた通り『条ケ崎家の呪縛からとかれ料理人になりたい』、青子は『有名になりたい』、戸森は『兄貴と暮らしたい』、杏奈は『お父さんと暮らしたい』だった。  次に背表紙の裏にあった赤い封筒の束を取り上げる。好きな人の名前だ。 「これは緊張すんなーっ」  戸森が次々に開いていく。  予想通り、杏奈と陽向は両想い。  戸森は青子の名前を。  そして「うっそ、まじ」、開いた戸森が目をまん丸くして青子の方を見る。なんと、青子も当時、戸森の名前を書いていたのだ。 「なんだよ、お前ら両想いだったんじゃん」  伊織の声に戸森が青子に抱きつく。  「うわ、俺すっげー嬉しい!」 「いてててっ。あんなに一生懸命私のために歌うんだもん。答えないわけにはいかないでしょ」  青子の笑みに戸森も満面の笑み。    よかった、ちゃんと戸森の想いは届いていたんだ。
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