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 戸森が続いて伊織のを開くとそこには私の名前があった。最後に私のを開こうとしたところで 「あなたたち、許可があって入ってるの? 何年度の卒業生?」  と、ドアがガラッと開き、知らない先生が入ってくる。 「うわ、堀越のやつ、他の先生には言ってないのかよ」  戸森が小声でささやく。 「ちょっと、出てきなさーい」  呼ばれるので「ごめんなさあいー」とまるであの頃、高校生だったときのように間延びした返事をすると、「せーのっ」の掛け声で戸森と青子、陽向が勢いよく駆けだす。 「ちょっと、あなたたち」  彼女が追いかけていくのを見ながら私ははずみで戸森が落としていった、自分の分の赤い封筒を拾い上げる。伊織はじっと私の手元を見つめる。 「いいんだ。六年前のことだ。行こう」   伊織はきっと私の紙には陽向の名前が書いてあることを想像しているのだろう。伊織が開けずに行こうとするので、 「待って」  と私は呼び止める。  開くとそこには誰の名前も書いていない。当時、私は誰の名前も書かなかったのだ。  でも今は――。  デニムの後ろポケットから別の赤い封筒を取り出し紙を開く。これは今朝、新たに書いたものだ。  土田伊織という名前を――。 「伊織。私も伊織のことが好きです」  静かにそう言うと伊織がバッと抱きしめる。伊織の背に両手を回しぎゅっと力を込め、唇を重ねた。
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