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「え?」青子が反応する。
「実は……」
灯がちょっと照れたような表情で陽向の方を見る。灯が続ける前に、陽向がかわりに口を開く。
「灯さんと付き合うことにしたんだ」
誰が見たってそう、この二人の並びを見れば、高校時代の陽向と杏奈を思い出す。あまりに早い展開に驚きはしたものの、内心はどこかで予想していたのかもしれない。他の面々よりも私はいくばくか落ち着いているように自覚する。それなのに、伊織の視線を感じて気まずくなる。どうして心の中を透視したみたいにそんな目で見るの――。
「パスタ作ろうと思ったのにオリーブオイル買い忘れちゃった。ちょっとスーパー行ってくる」
私は財布をかっぱらうように持って、逃げるみたいに玄関へ向かう。パタパタと後ろから追いかけてくる音がすると思ったら青子だった。
「私もお酒足りなそうだからついてくー」
成り行きでついてきただけだろうが、一人このタイミングで買い出しに行くよりは不自然にならずに助かった。
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