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 昼過ぎのスーパーは子供連れの家族でにぎわっていた。 「展開早すぎてビビったんだけど。やっぱ陽向ってあーいう顔が……」  調味料のコーナーへと向かう道すがら、そう言いかけた青子が乳製品売り場の手前で急に立ち止まる。 「どうしたの?」  青子の視線の先には、あの三上という男がいた。青子の不倫相手だ。隣にはこの前お店に一緒にきていた奥さんが並び、仲睦まじく、ヨーグルトの種類を選んでいる。青子の表情は明らかに固くなっていく。 「今日、仕事だから会えないって言ってたのに。奥さんとはもう、一緒に暮らしてないって言ってたのに」  小さくそう呟く声を最初聞き取れなかった。 「また、嘘つくの……?」 「青子……」  止めようとしたときにはもう遅かった。青子は二人のいる方向へ突然ドシドシと向かっていく。と、同じタイミングで視界に誰かが入る。  三上が手に持っていた紙パックのジュースをかごに入れようとした瞬間に落としたのを拾って差し出したのは戸森だった。  なんで、戸森が――。  三上が「ありが……」と言いかけたところで、その後ろにいた青子の存在に気が付いたようで顔色が冷めていく。やや沈黙が流れたあと、戸森が口を開く。 「青子は、こんなふうに扱っていい女じゃないんで」  そう言うと、ジュースを押し付けるように三上に渡し、青子の手をバッと掴みレジの方へ行く。一瞬のことで何が起きたかわからず、私もその後を追う。  店の外に出ると、青子がくしゃくしゃの顔で泣き、戸森に向かって怒っている。 「何してんの。なんてことしてくれたの。彼、困ってたじゃない」  そう言う青子を戸森は何も言わずに抱きしめる。 「戸森のばかやろう」  ドシンと戸森の胸を叩く青子がこれ以上壊れないように、戸森の太い腕が青子の背中を覆う。私は二人を置いて、先に家に戻った。
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