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「今日、戸森の家に行ってきた」
晴夫さんが持たせてくれた残りのパニーニを一口大に切って、おつまみ風にしたのを口に運びながら、伊織が話し出す。
「どうだった?」
「悪いとは思ったんだけど、パソコンを見せてもらったら、SNSがログインしたままだった」
伊織は、写真でとったパソコンの画面を見せる。写真専用のSNSのダイレクトメッセージの画面だった。チャットルームで一番上にあったNozomiという子とのやり取りは、戸森から始まる他愛もないもの。おはよう、お疲れ様、寒いね、など。最後は「おはよう。今日会えますか?」というNozomiから戸森へ宛てたメッセージだった。
プロフィール写真に映るその女性は同い年か、ちょっと歳上に見える。肌が白く、ブラウンの髪質は柔らかそうで、ゴールドのイアーカフがおしゃれにはえている。
「これ、戸森のアカウント?」
青子が尋ねる。
「多分」伊織が頷く。
「このNozomiって子は誰なんだろう」
戸森の趣味とは違うなと思いながらも聞いてみる。
「さあ、そこまでは」
伊織が首を横に振る。この一連のやり取りを隣で聞いている青子はずっと不機嫌そうな顔でミネラルウォーターをコップにも注がずにペットボトルからそのまま飲んでいる。
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