All is well that ends well.

28/29
177人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
  「…やれやれ」  本日の、主役の株をかっ拐い。  次から次と投げかけられる祝福の声を、腕に抱いた愛華と一緒に受ける能美の姿が人波に飲まれて行くのを見ていた楓馬の唇から、呆れたようなため息が漏れる。  そのため息を聞き逃さなかった誠はくすりと笑うと、 「能美のプロポーズが成功して、ホントは嬉しいクセに」  ライバル同士だからと、素直になれない楓馬をからかうように話しかけてきた誠に対して反論の言葉を口にしかけるも、軽く唸りながら雲ひとつない青空を見上げた楓馬は笑むと、 「あいつらのパーティーじゃないんだし。 おれらも、もっと祝ってもらいに行こう?」  と言って、昨日仕上がったばかりの結婚指輪が光る手を、誠に差し出した。 「…うん!」  差し出された手を、飛びつくように取った誠が握ると、優しくも肌に馴染む力で握り返され、自然と笑顔になる。  そして口々に、祝福の言葉をくれる人たちの間を縫うようにして歩き、この幸せを胸の奥で噛みしめた。 .
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!