Part1 悟

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「お前、また買って来たのかよ。太るぞ」 午後6時。営業回りを終えて帰社した俺は今日もケーキが入った箱を手に提げている。 同僚の陽生(はるき)にからかわれるのは毎度のことなので想定内だ。 「どうせ食うんだろ。ここのは美味いよ」 「そりゃ知ってるよ。まあ、ありがたくいただきますけどね。おぉい、また悟がケーキ買って来たぞ」 やったぁ! 周りの女子社員達から歓声が上がる。 「お前は食わないの?」 「あー…。俺はいいや。昼メシ遅かったんだよね」 「ははん。ほのかちゃんの顔見て胸がいっぱいですか?」 陽生がニヤニヤしながら言う。口の周りに盛大にクリームが付いている。 「お前、口拭けよ」 「おぅ。そこのティッシュとって。お前さあ、さっさと告れよ。意気地なしか」 簡単に言うんじゃねえ。俺がいま、どんな気持ちでいると思ってんだ。
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