10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
1. 一希、自称「荘周の蝶」と語り合う
ここは喫茶Café Jorge。
このお店には、いつも誰かが集まっている。
とある繁華街──駅から続く幹線道路は車の往来が激しく、行き交う人々は世間の忙しなさに追い立てられている。けれど、一本横道に入れば、そこは穏やかな時間が流れる、落ち着きに満たされた裏通りだ。
その裏通りと、別の細道とが交差する角地に、喫茶Café Jorgeはひっそりと建っている。
濃い色の木目調で統一された店内は、古めかしい外観に違わず、慌ただしい日常から取り残されたかのような、レトロな佇まいだ。
やや近寄りがたい雰囲気ながら、ここを訪れるのは学生からお年寄りまで、実に様々だ。客層に垣根はない。
穏やかな陽光の降り注ぐ昼下がり、飴色のドアがゆっくりと引かれる。
さて、今日はどんなお客様がいらっしゃるのか……。
──カランッ。
最初のコメントを投稿しよう!