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「そんなに見られると緊張しちゃうんだけど……」
「す、すいません!」
少女の声が緊張で上擦っている。完全にテンパってしまっている少女はそのままの勢いで、大きく息を吸ってから言う。
「あ、あ、あの……。せ、せんせっ! あの……、わたしのこと……、で、で、弟子にしてっくだっさささい!」
顔を真っ赤にしながら少女が伝えてくる。あまりにも脈絡の無い弟子入り希望宣言を聞いて、苺花は苦笑した。
「ごめんね、わたし弟子とかそういうのは取ってないから」
できるだけ、優しい声を意識して伝える。そして、一旦冷静になってもらうためにメニュー表を渡した。
「とりあえず、何か頼んだら?」
少女が無言で頷き、コーヒーセットのショートケーキ付きを頼む。今苺花が食べているものと同じものだ。
「弟子って言ってたけど、もしかしてあなたも漫画描いてるの?」
ショートケーキに塩をかけながら苺花が尋ねると、彼女は頷いた。
「先生にすごく憧れていて、いつかは先生みたいなキュンキュンする漫画が描けるようになりたいんです。先生みたいになりたいんです!」
「今原稿とかって持ってる?」
苺花は興味本意で尋ねた。自身に憧れている子がどのような漫画を描いているのか気になった。
「原稿はないですけど……」
彼女はカバンからノートを取り出して、苺花に差し出す。ペンネームに海水レナと書かれている。
ザッと読んでみたけど、良くも悪くも無難な作品だった。絵は綺麗だし、何かのきっかけで個性を得たら伸び代はとてもありそうだけど、現状のままだと厳しそう。
原稿から顔を上げて、レナの方を見ると、先ほどよりもさらに真剣な瞳で苺花のことを見つめていた。
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