ホモ

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「ねぇ、ホモ01」 「なに?ホモ02」 亀田が、上の方をチラチラ見ながら話しかける。どうやら、相当怯えている様だ。 「何で刑務所に入れられたの?」 単刀直入に言われ、神田は少し戸惑った。 自分の犯した罪について、いくら彼でも少しは罪悪感を感じているのだ。 神田の脳内に懐かしき日々の記憶が断片的に浮かんでくる。 「かみたん」 そう呼んでくれた、あの子たちは、ここにいない。 能天気な神田の表情が少しだけ曇る。 「それはね、僕が…」 言い終わらない内に、上から油が降ってきた。いや、覆いかぶさってきたと言う方が正確かもしれない。 「僕?お前はホモ01だろうが」 牢屋には水深10センチほど油が溜まっている。 「えーと…僕k…ホモ01はね、好きな男の子にモップで叩かれたからね、刑務所に仲間入りしたんだよ!」 もう、神田の脳内には、思い出など、かけらも浮かんでいなかった。 きれいさっぱり忘れ去り、特有の虚言癖が出ていた。 周りの三人は首を傾げながらも、うんうんと頷いている。その時、神田は重大な事を思い出した。 「あ!ぼk…ホモ01の日時計が!」 力作の日時計の安否を確かめる。その瞬間、神田は思わず飛び上がった。 「やったやった!ぼk…ホモ01の日時計が無事だったよ!」 神田は嬉しさのあまり、手で油を掬うと隣の亀田にかけてしまった。頭頂部からつま先まで天ぷら仕様の亀田は、全力でキレた。 「ホモ02に油をかけるとは!ホモ01め…お、怒るぞ!」 そして、亀田は牛田と金田の二名に油を投げつけた。 完全に八つ当たりだ。 そして、「見た目は大人、中身は子供」の人間達の醜い争いが起こるのだった。
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