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☆…………☆
日時計は午後の九時を指していた。
疑問に思った読者様もいるだろう。
しかし、日時計は、午後の九時を指していた。
———天井から吊り下がっている直径2センチのオレンジ色の豆電球の光で。
だから、事実としては、時間は分からない。
しかし、神田は信じている。
日時計を。
だから、神田は少なくとも、午後の九時だと信じている。
そもそも、神田は太陽が東から上ることも知らないだろう。
これで教師がつとまっていたんだから、たいしたもんだ。
「水浴びの時間だ」
例の、警官が鉄格子を開けた。
「やったぁ!お水!お水!」
狂う神田とは違い、三人は眉を顰めた。
「水浴び…」
「風呂のことか?」
脱衣所…とは言い難い薄汚い部屋に入る。
「脱げ」
警官が言い放つと、先に奥にある部屋へと入っていった。
恐る恐るといった具合で服を脱ぐ三人とは違い、神田は服を脱ぎ捨てると、「いっちばーん!」と騒ぎながら奥の部屋へ入っていった。
その部屋とは、コンクリートでてきとうに固められた壁に、小学校の水道みたいなのが一つあるだけのものだった。
警官は腕をまくり、ホースとデッキブラシを構えて待っていた。
すると、その前でいきなり神田が土下座をした。
「は?」
「え?」
何かの変態プレイが始まったのだろうか。
牛田たちは茫然とした。
警官はホースから冷水を出すと、神田の方に向け、デッキブラシでその体を力一杯擦った。
ただでさえ暖房の無い部屋なのに、冷水が熱を奪っていく。
三名は寒さと恐怖で震えた。
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