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その夜、夢を見た。
真っ白な世界。
テオは無表情でルイスの前に立っていた。
「ルイス、僕の気持ちを考えたことある?」
「……」
「貧乏人が指図すんな、って話も聞かないで
あげくこんな体にして」
「僕は……力を知らしめて口答えしないようにと、思って」
テオは、首を傾げた。
「力って何?
裕福な家に生まれたこと?
父親が偉いこと?
それは、君の力?」
「……」
少しくらい悪さをしても、世界の中心は自分だった。禁書を書いた奴が、貧乏な奴が、自分に逆らう奴が悪いと思っていた。
「でも、本当は違うって、わかってるんでしょ。
力も環境も関係ない。
君自身が罪を犯したんだ」
なぜだかこの場でなら素直に受け取れた。その通りだ、と思った。
「テオ、僕が悪かった。
僕は罪人だ」
汚れた魂の、愚かな人間だ。
自分が馬鹿にしていた貧しさよりも、悪だ。
白い世界が足元から黒く変色していく。いつの間にかテオはいない。黒は霧のように辺りにたちこめ、ルイスを真っ黒に染め上げる。
息ができない。
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