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ルイスの父は遠い王都で高い地位にあり、屋敷も町一番の広さだった。ルイスには誰も逆らわない。
しかし最近町に越してきたテオは違った。
正義を振りかざし、ルイスに何かと食ってかかる。
「ルイス、先生の話を聞こう」
「貧乏を笑うな」
「そんなお菓子欲しくない、物で釣るのをやめたらどうだ」
生意気で嫌な奴だった。少しこらしめてやろうと思った。それで今日、学校から盗んだ禁書にあった魔法を使ったのだ。
この後が楽しみだった。あのテオがとうとう服従する。「もう二度と虫にしないでください」と頼んでくるに違いない。
そろそろ戻してやるかと杖を振る。
「戻れ!」
今度は銀色の光が放たれる。
しかし虫に変化はなかった。
二度三度と杖を振る。間違ってはいないはずなのに、どうして戻らないんだ。
取り巻き達がさすがに心配そうに、虫とルイスを交互に見る。
やがてルイスは肩をすくめた。
「難しい魔法だから、解けるのにも時間がかかるんだろ。一、二時間もすれば元通りさ。
さあ、あっちの丘で遊ぼう。誰が早く着くか競争だ!
一等の子にはお菓子をあげるよ」
テオを気にしていた子たちも、ルイスがポケットから珍しいお菓子を出すと釘付けになった。一人が駆け出すと、皆が続く。
遊んでいるうちに日が暮れて、召使いが迎えにきた。
ルイスはそれきりテオのことを忘れてしまった。
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