虫籠

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虫籠

 その夜は宿に泊まった。子供一人で不審がられたが、父の名前と金を出すとすんなり案内された。食事をとり、ベッドに入る。拍子抜けするほど順調だった。窓辺に置いた虫籠の中で、虫はじっとしていた。視界に入れたくなくて寝返りをうつ。    今日一日で、すっかり世界が変わってしまった。  こんな形で屋敷を出るなんて思ってもみなかった。常に周りに人がいるのが当たり前だった。  そもそもテオが現れなければこんな目に遭わなかったのに。あいつのせいだ。    全部夢だったらいいのに。  そう思いながら眠りについた。
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