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0ー3 『主持ち』
焦ったオルトは、何を思ったのか自分でぐっと水筒の中身をあおるとそのままわたしに口移しで飲ませようとした。
ちょっと待って!
わたし、初めてなんですけど!
驚いているわたしの喉を熱くて苦い液体が流れ落ちていく。
体が、かあっと熱くなってくるのを感じた。
それは、とてもとても強いお酒だった。
わたしは、そのまま再び意思を手放した。
それからのことは、エミリアおばあ様にきいたことなのでさだかではない。
なんでも、濡れた服を脱がされてジェイドとオルトに暖められたとか。
マジですか?
それが本当ならわたし、もうお嫁にいけない!
とにかく、わたしは、ジェイドとオルトのおかげで2、3日後には、自分の部屋のベッドで目覚めた。
そして、わたしは、オルトに口移しでお酒を飲まされたことを思い出していた。
マジか!?
思わず、わたしの頬を大粒の涙が流れ落ちた。
ベッドの脇でわたしが目覚めるのを待っていたエミリアおばあ様がそっとわたしの頭を撫でた。
「怖かっただろうね、アリシア」
「わた、わたし・・・」
わたしは、エミリアおばあ様にしがみつくと泣きながら訴えた。
「オルトと結婚しなくちゃいけなくなっちゃった!」
「そうなの?」
エミリアおばあ様は、優しくわたしの赤い髪を撫でてくれた。
わたしは、涙が溢れ落ちるままにおばあ様を見上げた。
「オルトにキスされたの!魔女は、初めてキスされた男のものにならないといけないんでしょ?」
「あら、あら」
エミリアおばあ様は、わたしとよく似た緑の目を細めた。
「それじゃ、あなたは、もう『主持ち』になったってわけね、アリシア」
『主持ち』という言葉にわたしは、青ざめて息を飲んだ。
魔女にとって主人とは、伴侶のことであり、また、おのれの力の及ばぬ相手のことを表している。
主人の言葉に魔女は逆らえない。
まだ、8歳なのに!
わたしは、絶望していた。
この年で、もう、『主持ち』になってしまうなんて最低!
しかも、よりによって主人があの弱虫オルトだなんて!
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