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 0ー1 幽霊  わたし、アリシア・ラキシスが前世の記憶を思い出したのは8歳のころのことだった。  その日、わたしは、死んだのだ。  凍てつくような暗い冬の湖の中で。    『まずやらなくては、後悔はできない』  わたしの幼馴染みであるオルト、オルトリッジ・オールドダークは、かつてわたしにそう言った。  まったくその通りだ。  そして、人は、やらかしてしまってから盛大に後悔するのだ。  その小雪の舞う日、オルトをスケート遊びに誘ったのは、わたしだった。  わたしの祖母の住む森の近くにはスケート遊びにちょうどいい小さな湖があった。  スケート遊びというのは、わたしが考案した遊びだ。  今思えば、これも前世持ちだったからなのかもしれないが、わたしは、なかなかの遊びの天才だったのだ。  オルトとわたしは、森の外に住んでいるきこりのジェイドおじさんに作ってもらった木製のスケートを持って湖へと向かった。  まだ冬は浅く湖の氷は薄いので、あまり湖の真ん中へいってはいけないとエミリアおばあ様は言った。  わたしは、しっかりと頷いた。  なのに。  わたしは、ついうっかりと氷の薄いところへと近づいてしまった。  それは、幽霊のせいだった。  氷の薄くなっている辺りに幽霊がいるのが見えたのだ。  この頃まだわたしは、この幽霊というものに馴染めてはいなかった。  幽霊というのは、エミリアおばあ様がいうには精霊と呼ばれるものなのらしい。  普通は、人は精霊が見えたりはしない。  「いいかい?アリシア。私たち魔女は、精霊が見えるし話もできる。だけど、このことを他の人間に知られてはいけないよ。これは、太古からの魔女と精霊の取り決めだからね。もしこの取り決めを破れば悪い精霊につれていかれてしまうよ」  エミリアおばあ様いわく、幽霊には二種類のものがいるらしい。  一つは、よい幽霊で人の役にたとうとしてくれる。  だけど、もう一つの幽霊は、人を闇に引き込もうとする悪い幽霊だった。  だけど、まだ幼かったわたしには、そんなことは理解できなかった。  だから、湖の真ん中にたっているその幽霊に話しかけてしまったのだ。  だって、その幽霊は、とっても美しかったから。  幽霊は、長い銀の髪をしたこの世のものならざる美しい少女の姿をしていたのだ。  「なんでこんなところにいるの?」  「さみしくて」  少女は、その蒼い瞳でわたしをとらえた。  「あなた、私とお友だちになってくれる?」  まずい、と思ったときにはもう遅かった。  わたしは、すでに、その少女の瞳にとらえられてしまっていた。    
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