静寂の檻

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 考えられる可能性は二つあった。ドアノブ自体が壊れているか、あるいは何かの拍子に内鍵が勝手にかかってしまったか。後者の場合、内鍵なら簡単に開けられるはずなのだが・・・。 「あれ?おかしいぞ」 「どうしたの?」 「内鍵を開閉するためのサムターンみたいのが何処にも付いてないんだ・・・。なにか仕様説明書のようなの、ない?」 「あるけど、外のテーブルの上に置いてきちゃったわ」  なら仕方ないな。僕はスマホでメーカーのホームページを探してみたけれど、見つからなかった。参考になりそうなのは通販サイトの商品ページだけか。  しばらく目の前の実物と商品ページの画像を見比べてみて、僕はまたおかしな事に気付いた。 「ドアの向きが逆なんだ!このドア、内開きについてるけど商品ページの画像の方は外開きになってる。きっとそっちが本当なんだ」 「あ、それだったら」  輝美はさも事もなげに言った。 「業者さんが組み立てる時に私が頼んだの。ドアが外側に開くと部屋がますます狭くなっちゃうから逆にできませんかって。 そしたら壁一面ごと反対にしてくれて・・・」 「な、なんだって~!?」 「えっ!?ダメなの?」 「いや、そりゃそうでしょ・・・」  つまりこのドアには当初、よくあるトイレのドアと同じように、内側からしか開かない錠前がついていたのだ。それを反転させたということは・・・。 「一度鍵がかかったら外からしか開かないドアになっちゃったんだよ!」 「え?ど、どうしよう・・・」  ようやく事態を把握したのか、輝美の顔はみるみる青ざめていった。
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