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必死に助けを呼ぶその声は防音室の外には届かず、あえなく二人は数日後に遺体となって発見・・・。という展開にはならない、幸いにして。 なぜなら僕はスマホを持っているから。こういう場合は、アパートの管理会社に連絡すればいいんだ。住み込みの管理人がいるわけじゃないから、ここに到着するまでに少し時間はかかるだろうけど。
「でもまあ、大事にする前にできる限りのことをやってみようよ」
「う、うん・・・」
輝美の声はかつてないほど弱々しく、気のせいじゃなく本当に顔色も悪いみたいだ。
「輝美、どうした?もしかして具合悪い?」
「あ、あのね、言いにくいんだけど」
もじもじと視線を泳がせながら言った。
「トイレに・・・行きたいの」
「そりゃ大変だ。どっち?大?小?」
「な、なんてこと聞くの!?バカー!」
信じられない、とでもいうように、目を大きく見開いて叫んだ。
「・・・小さい方に決まってるでしょ!」
「あ、それだったらさ、」
ちょうどいい物があるとばかりに、僕は先ほど作業しながら飲み終えていた空のペットボトルを差し出しながら言った。
「この中にしちゃえば・・・」
「ななな、なんてこと言うの!?できるかあ!バカー!!」
叫びながら輝美が投げ返してきたペットボトルが僕の頭に命中し、ポコン!という快音を立てた。
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