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変わってるのか、やっぱり。
見かけをどんなに取り繕っても、変わり者の本質は漏れ出てしまうものなのだ。
着古したブルゾンとデニムパンツの私服で通勤していることを理由に、一度は安城のアフター申し出を断ろうとしていた。そこへ救世主のように現れたミサトさんから、
『私の置き衣装で良かったら、着て行って』
と、鮮やかなブルーのセットアップドレスを手渡された。
いや、でも……と躊躇する私に『クリーニングは気にしないで、そのまま返してくれたらいいよ。私も入りたての頃は、そうやって先輩に借りていたから』と。けれど━━。
着飾ったところで、ミサトさんや他の女の子たちのようになれるでもなく。
そんな考えを巡らせる私を気落ちしていると捉えたのか、エスカルゴの殻を剥きつつ慰めるように安城は話題を逸らした。
「清純派なんて言われてる女優たちだって、殻を剥いたらドス黒かったりするんだから」
━━殻を剥いたら。
「私も……」
「え?」
「あ、私も剥いてみたいです。エスカルゴの殻」
「どうぞ、どうぞ。レッツ・チャレンジ!」
安城の朗らかな掛け声に助けられ、私は左手に持ったハサミのようなサーバーでかたつむりに掴みかかる。右手にした銀の細いフォークで中身を掻き出しながら、心の奥で壊れたレコーダーのように繰り返しつぶやいた。
━━殻を剥いたらドス黒いかもですよ、私も。
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