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その女の子は、夏にだけその洋館にあらわれるとわかりました。女の子は、歌だけではなく、姿かたちもしぐさもそのひとみも、ぜんぶがまぶしく見えます。
さわさわと鳴る緑の葉っぱたちの中、飛ばされそうな麦わら帽子をおさえ、すっすっと歩いていく短パンの足もカッコよくて。
ときどきお家の窓ごしに見える、鏡に向かう姿もすてきでした。毛先がくるりとカールする長い髪を、ブラシでていねいにとかしていきます。1回ごとに髪は柔らかさが増し、どんどんつややかに光っていくのです。まるで魔法のようです。
「マリエ、あれ買ってきてくれた?」
お母さんらしき女の人が、そう呼んでいました。
マリエさん。
とてもきれいな、よくにあう名前だと、たぬおくんは思いました。
でも、ときどきちょっとさびしそうだな、とも。
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