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何とかマリエさんと話せないものだろうか? たとえば好きなものは何だろう?
でも、たぬおくんはこんな姿です。沼に映してみても、全体的には地味な茶色、でっぷり出っぱったおなかは白。目のまわりには黒ぶちがあって、手も足も短い。ふっさりとしたしっぽもある。
会って話すには、はずかしい。でもマリエさんをよろこばせたい。
「えいやっ!」
かけこんで空中一回転。ぽむっと音を立てて、たぬおくんはお花になりました。これならマリエさん、気に入ってくれるかもしれません。
マリエさんが一人でお散歩するのを知っていたたぬおくんは、何くわぬ顔で道ばたにたたずみました。マリエさんは、一つ一つのお花に話しかけていました。そしてたぬおくんの番になると。
「あなたずいぶん大きいのね……あら、これなにかしら?」
マリエさんは、花びらの先に、ふかふかしたものを見つけました。
「しまった」
しっぽがのこっていたのです。たぬおくんは化けるのがへたくそで、タヌキ学校にいたときにはみんなに笑われていたくらいでした。
あわててぽむっとえんまくをはります。マリエさんがビックリして目をとじたいっしゅんで、たぬおくんはその場から消えるようににげたのでした。
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