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嵐の夜の爆走
九月の連休のとある夜のことである。
ダンナがいきなり腹痛を訴えた。顔をしかめ、脂汗をたらし、うんうんうなっている。何事かと様子をみているうちに「痛い、痛い」に加えて「寒い、寒い」と言い出した。
あきらかに緊急事態である。
私たちが暮らしていた、県西部のとある市の市民病院が医師不足のため、救急指定から外れてしまった矢先のことだった。
こういうときのために、市の広報誌に「緊急時の連絡先」として市民病院の電話番号が記載されていたので電話してみると「自分は警備の者なので対応できない、かかりつけ医に相談してください」という、馬鹿げた返答が帰ってきた。
ぶち切れた私は「引っ越してきたばっかりで、そんなもんあらへん!だいたい、緊急時の連絡先に電話してんのに、どないなっとんねん」と(実際はもう少しお上品に言った)訴えたところ、出雲市の県立病院に電話しろといって番号を教えてくれた。
言われた番号にかけると、今度はちゃんと医療従事者の方が応対してくださり、症状を伝えると「すぐに病院に来てください。救急車を呼んでいただいてもかまいません」とおっしゃった。
救急車を呼ぶより自力で行く方が確実に早いと判断し、ダンナを後部座席に転がして、私はハンドルを握った。
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