夏の風物詩

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夏の風物詩

 海に面した港町で花火大会があるということで、早速出かけて行った。  花火が打ち上げられる場所は、海岸沿いから数百メートルほど離れた、海の中にぽっかり浮かぶ小さな島。それを海岸から眺めるので、ものすごく距離が近い。そのため、迫力が半端なかった。  最初の一発目が上がったとき、火の玉を目で追っかけると、完全に真上まで上がった。 首が痛くなるほど見上げたその先の、視界いっぱいに花火が広がり、そのまま降ってきそうな錯覚にとらわれる。そして、音と光の時間差が少なく、音の響きが全身を通り抜けるようにどーんと伝わった。  普段の港町から考えると、多くの人で賑わっていたのだが、人でごった返すということもなく、座り込んで足を伸ばし、ゆったりと半分寝そべるようにしながら観る花火は、今まで味わったことのない感動があった。
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