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間の悪いことに、その夜は大型台風上陸まっただ中だった。しかし、ためらっている場合ではない。苦痛にゆがんだダンナの顔色は土色で、冗談抜きでヤバそうだ。
ほとんど街灯なんてない真っ暗闇の中、すさまじい雨と風でワイパーも役に立たないけれど、ヘッドライトをハイビームにして海岸沿いの道路を爆走した。
海は大荒れで、真っ白に泡だった波がものすごい勢いでザブーンと波打ち際に打ち付けられて、時折、そのしぶきが道路まで飛んでくる。
通常、私の運転で、自宅から出雲市中心部までは、四十五分から五十分かかる。それを二十五分で走った。夜中でほとんど他の車が走っていなかったのが幸いしたのだが、後にも先にも、最高記録だった。あんな怖い運転は二度としたくない。
電話で指示されていた救急搬送用の入口に滑り込むと、すぐに看護師さんが駆けつけてくれた。さっき電話したものだと伝えると、皆まで言うなと言わんばかりに、すぐさまダンナを連れて行った。
検査と診察を待つ間、他の多くの患者さんがやってきて、その都度看護師さんたちがダッシュで駆けつけ、対応されていたのには、頭が下がる。ホントに感謝しかなかった。
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