愛しき島根

土嚢（どのう）、どうよ

　しかし、である。土嚢を作るための土はどうやって調達するのだろうか。首を傾げる私のために、ダンナが職場の人にそれとなく聞いてくれたのだが、何の役にもたたない返答だった。職場の人曰く「そがなもんは、どがなと適当に掘ればええがぁ」…。
　ムリな話である。自宅に庭があるとかなら簡単だが、賃貸アパートの敷地内の土といえば、植え込みくらいで、そんなの勝手に掘り返したら、絶対怒られる。かといって、空き地に勝手に入り込み、土を掘るなんて、不審極まりないではないか。
　結局、土嚢の袋は、捨てるわけにもいかず、島根県を去るその日まで、自宅の隅に置きやられていた。
　ちなみに、土嚢以外にも、なかなかヨソモンには理解しがたいことがあった。市から健康診断のお知らせが届き、健診カーが来る日時と場所が複数書かれていた。人口が少ないので特に予約することもなく、一覧から自分の都合のいい日に都合のいい場所へ行けばいいということなのだが、謎な場所が多すぎた。中でもふるっていたのが「藤井さん宅前の空き地」というもの。
　藤井さんって誰？
　私が健康診断の場所に選んだのはもちろん、藤井さん宅前ではなく、市民図書館の駐車場だったのは言うまでもない。