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虫、無視、無理!
私は虫が大嫌いだ。奴らの動きは予測不能で、見た目がキモくて、刺したり噛んだりする輩もいる。しかも、私は、かなり噛まれやすい体質のようで、私がいれば蚊取り線香はいらないと、よく言われる。
島根には出身地の大阪とは比べものにならないくらい、虫がいた。まさに虫天国。
まず、夏の夜、玄関前が恐怖だった。私が暮らす四階建てのアパートは、周囲の家屋の中では一番の高層だった。当然、夜になると外廊下は電気が灯される。
自宅は最上階の四階の中央の部屋で、エレベーターなどないから、階段をえっちらおっちら登り、問題の外廊下を通って、部屋のドアまで行くのだが、これがすごいことになっている。
辺りが真っ暗闇の中、不夜城のごとく明かりに照らされた外廊下めがけて、おびただしい数の虫たちが本能のまま飛んでくるのだ。蛾やら虻やら、名前の知らない羽のある奴やら、やたらでかい奴やら。カブトムシやクワガタなんて、勢いあまってひっくり返ってもがいている。まさに、ヒッチコックの世界だ。
容赦なく飛んでくる虫たちから身をかわすため傘をさし、できるだけ身をかがめて足早に通り過ぎ、素早くカギを開け、最小限に開けた扉に滑り込む。
ただ、不思議なことに、この現象、梅雨明けから始まり、お盆がすぎるとピタリと止む。自然の生き物というのは規則正しいものなのだと思った。
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