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そして、ヒッチコック現象が終わると、網戸で弱肉強食の戦いが繰り広げられる。網戸に止まったバッタにカマキリが襲いかかるのである。頼むから、よそでやってくれ。
しかし、私を最も戦々恐々とさせたのが、カメムシであった。
奴らは晩秋の頃、夜間の気温が十度をしたまわったら出没する。
外に洗濯物を干していると、その洗濯物に潜んで、家の中に侵入する。外出すると、こっそり肩や背中に止まって、一緒に家に帰ろうとする。
奴らがやっかいなのは、茶色くて固そうでガニマタという、見た目のキモさもさることながら、なによりも、匂いを発すること。勝手に人んちに入ってきて、勝手に身の危険を感じて、恐ろしい悪臭を放つのである。そしてその匂いは、なかなかとれない。一度、外でうっかり踏み潰してしまったことがあり、その靴裏はどれだけ洗っても、滴るほどのファブリーズしても、二週間以上とれなかった。
だから、奴らを見つけると、刺激しないように、そうっと近づき、適度の長さに切ったガムテープをそっと背中に貼付け、何が起こったかわかっていないうちにテープで包み込んでゴミ箱に捨てる。これもまた、怖いキモいでヒーヒーいいながらの作業になる。
ゆえに、十月の終わり頃になると、洗濯物は部屋干し、家に入る前に、念入りに服を払うなどの対策をとるのだが、いったい、どこからどのようにしてか、奴らは家屋に侵入してくるのである。
朝、カーテンを開けたときに、上からポタリと落ちてきたときは、ホラー映画さながらの悲鳴を上げてしまった。
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