ホワイトデーの真実

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「オヤジ、出歩いたりして大丈夫なのかよ?」 「平気さ。そうそう、今度どこか親子で旅行でも行こうか」 「そうだな……」  と、言い掛けた目の端に、レベッカに到着したらしい佐々木と、先程の美人が何事か言い争っているのが映った。  機嫌が悪いのか、佐々木は美人を睨みながら何か文句を言っているようだ。 (佐々木サン――?)  陽太は、その瞳を見て直感した。  佐々木は怒っているような顔をしているが、本心は違う。  目の前の人物に対し、明らかに好意を抱いていると。  咄嗟に陽太は、父親や伯父の手を振りほどいて、急いで佐々木の元へ駆け寄ろうとするが。  だが、チャイナドレスの美人に(なだ)められるように肩を抱かれながら、入って来たばかりのドアから外へとUターンする佐々木の頬が、ほんのりと緋色に染まっているのが分かり……その足は止まった。 (佐々木サンって、あんな嬉しそうな顔をするんだ)  これから先どんなに尽くそうとも、自分には決して、佐々木はあんな風に嬉しそうに笑い掛けてくれるなんて事は無いだろう。  それが分かり、陽太は、自分の恋の望みが絶たれた事を悟った。 ――でも、まぁ。 (あんな美人が相手だったら、そりゃあオレに勝ち目なんてないよな。だってオレも、惚れちゃいそうだもん)  そう納得すると、陽太はくるりと振り返り「じゃあ、とりあえず今夜はオヤジのオゴリで、ここにいる全員にもう一杯な!」と、景気の良い事を言った。    ◇ 「ちょっと、所長! なんです、馴れ馴れしいなぁ」  とか何とか言いながら、肩を抱かれてちょっと嬉しそうな佐々木であるが、綾瀬も別の理由でホッとしていた。
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