chapter 4 フェイクな花嫁

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仕事の帰り杏奈はワールドトレードセンターの 屋上ガーデンにくるみを連れて行った ひっく・・・・ 「酷い・・・酷いです・・・・ 正人さんも妹さんも・・・   」 婚約が破棄になった話を一からくるみに説明していると 思いがけず杏奈の心は軽くなっていた事に気が付いた あの二人を想っても依然と比べてそれほど 心は痛まないのに驚いた そして以外にもくるみは杏奈にすごく同情して 正人とカンナに家族よりも酷い怒りをあらわにした 「いったい・・・どういう神経なら そんな酷い事が出来るんですか? 実の姉の婚約者を寝取るなんて・・・ あの二人はいったいどうやって始まったんでしょう? どっちから誘ったんですか? 杏奈先輩の目を盗んで・・・ いつ逢引きしていたんでしょう・・・? 」 クルミはそう言い 愛嬌のある顔を苦々し気にゆがめ 泣いている 今二人はトレードセンタビル屋上ガーデンの ツル薔薇に覆われた石壁の前に設置されている ベンチに腰掛けて話していた 薔薇は5月の昼間の暑さのせいですっかり開ききっていた 目の前にはこぢんまりとした花壇と噴水が広がり 蔦の絡まるアーチの向こうには大阪湾が一望でき 夕日がキラキラ海面に反射していた この時間帯はすっかり人はまばらになり 杏奈は人目を気にせずくるみにだけは 正直に話せることに内心安堵していた 今は自分の気持ちを考えて家族よりも 一生懸命怒ってくれている くるみを見て嬉しく思っていた
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