chapter 4 フェイクな花嫁

10/32
前へ
/383ページ
次へ
杏奈はレモンフラペチーノを口にして しばらく黙りこみ やがてその酸味がまだ口の中に残っているかのように 眉を寄せて厳しい口調で言った 「今では婚約が破棄されてこれでよかったと 心から思っているの そのおかげでフラワーショップを経営する 幼い頃からの夢を思い出したわ 最愛の公子おばさんが亡くなってから 現実を見つめ過ぎたのよね・・・ でも今回の事でわかったわ 誰かを心から愛し・・・ その人のことを絶えず心配し その人の幸福の事だけを考えることが どれほど無意味なことか・・・ 今はこのビジネスをしっかり遂行して 自分の夢を叶える事が本当の自分を幸せに  してくれるものだと思えるの・・・・・ 私・・・必ず成功して見せる 」 懸命に感情を抑えながら最後の言葉を自分に 言い聞かせた くるみは頷き杏奈の顔を伺った 「そうですね・・・・ でも・・・その言い方では・・・ 杏奈先輩・・・     」 クルミは心配そうに囁くように言った 「もう二度と誰も愛さないと 言っているように聞こえます・・・」
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7628人が本棚に入れています
本棚に追加