chapter 4 フェイクな花嫁

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海運王が結婚するという 話題はマスコミを大いに騒がせ 大和はその報道陣も気前よく式場に入れて 好きに報道させた ずっと以前から計画を練っていた自分の結婚式 すべてがこのディアマンテ傘下の新しい ブライダル事業部「ミラージュ」と「豪華客船業」 のプロモーションになるのだから 社をあげて気合いの入った企画だった ・・・・・・・・ 教会内に集まった人の群れを観察しながら 大和は満足そうに息を吸った ミラージュのウエディングプランナー精鋭部隊 にすべて任せた結果蓋を開けてみると 晴れた日の二人の門出を祝うには最高の挙式となった 世界中から花を集めたのではないかというほど 「聖レイチェル結婚式場」は見事な生花にリボンが飾られ甘ったるい芳香を式場中に充満させている 礼拝室の祭壇は豪華なユリとステンドグラスが ここぞとばかりに飾られており 素晴らしい異空間を演出していた 実際に何人ものカメラマンがさきほどから 撮影している そこの入り口に大和は素晴らしい花婿の クラシカルなグレーのタキシードに身を包み 純白のクラバットを襟元に巻いて リラックスした態度で礼儀正しく招待客に挨拶をしていた 「今日は晴天で 今年一番の五月の陽気になるそうですよ」 花婿の付添人の一人を務める第一経理部の真田は 礼拝堂の客の入りの様子を確認してから 大和の所に戻って来た 彼も大和に引けを取らない高身長で たいそう整った容姿をしているにも関わらず 必要であればその存在を消せる男だった
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