chapter 4 フェイクな花嫁

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いよいよ礼拝堂は招待客でいっぱいになり その後ろの立ち見は報道陣で すし詰め状態になった しばらくして 礼拝堂の入り口に杏奈一行が着いたらしく 大和のいる祭壇前からもわかるぐらい 今は閉ざされた入り口ドアの向こうで ザワザワと何人もの人の気配がした ほどなくして入場音楽が静かに始まり 地元の音楽家が金の小さなハンドベルで奏でる 美しい調べが礼拝堂いっぱいに響き渡った ハンドベルの音色は繊細さや遊び心をも添え 美しく厳格な雰囲気を礼拝堂いっぱいに作り出した 小さなドローンが二台ブンブン空中を飛んでいる ミラージュプロモーション映像クルーが 別室で撮影している 花嫁付添役のカンナと晴れ着を着た佐奈が しとやかに通路を進んできて 親族の自分の席に座った 式が始まる前に杏奈の家族とは少し話していた そこで初めて次女のカンナを紹介された 大和はカンナと2~3言葉を交わしたが 厳しい目線で見ている母親に遠慮して すぐにその場を離れた 今は親族席から末っ子の佐奈が大和に茶目っ気のある かわいらしい笑みを送ってきていた 大和はその笑みを受け片方の口角を上げて佐奈に応えた それを横にいるカンナが佐奈を凝視していた ハンドベルの鐘の音が一層大きく響いた 花嫁の登場だ ざわっと会場が湧き ドローンが花嫁の姿を一番良い位置で捉えようと ドアの真ん前に一時停止し 誰もが花嫁を見ようと後ろに身を乗り出したので 祭壇前にいる大和はすっかりみんなから 忘れられた存在になった
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