chapter 4 フェイクな花嫁

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カメラマン含む報道陣が一斉に シャッターを切り始めた 眩しいフラッシュがあちこちで焚かれる 観音開きの両扉が全開に開き 花嫁の全貌が明らかになった 一斉にどよめきと歓声があがる わぁ!・・・ 「綺麗だわ!」 誰かが思わず声を漏らした 父の肘をとりゆっくりとこちらへ歩いてくる 真っ白に輝くなんの素材だか大和にはわからない ドレスは優雅ながら恐ろしい程飾り気がない しかしだからこそ素材の良さを生かした彼女は 女王のような輝きを放っていた 大和がイメージしていた花嫁の体つきを隠す様な ヒラヒラしたようなフリルなどは一切ついていなく こんもりと盛り上がった胸のビスチェには 本物のスワロフスキーがこれでもかと ちりばめられている 後頭部の髪だけを頭上高く結い上げられて 後ろはどこまで続いているのかと思わせるほどの 長いベールをひきずっている その素晴らしい総レースのベールの美しさは 参列している多くの女性からため息がもれていた そしてその数メートル後で 「ミラージュ」のドレスクルーが彼女の ベールを支えていた 装飾品は端から中央へ向けてダイヤモンドの 星が大きくなっていくティアラと それとお揃いのダイヤモンドを小さく ちりばめたローズカットのネックレスだ 時価数千万円相当だと伺っている ミラージュは日本進出に本気を見せてきている しかし彼女の美しさは礼拝堂のライトの光に反射して燦然と輝く彼女が身に着けている 宝石にも劣らない 大和は手を無意識にギュッと握った そして馬鹿みたいに呆然と祭壇前に佇んでいた この感情をなんと呼べばいいのだろう とにかくプロモーションは 大成功だということだけはわかった 彼女は美しかった 人間とは思えない美しさだった
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