chapter 4 フェイクな花嫁

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【数時間前】 「ようこそ海運王の花嫁様・・・」 ステンドグラスの高い天井から光が差し込む 花嫁支度館という建物の 荘厳な四角い玄関広間へ杏奈が入ると そこには一列に並んだ 「ミラージュブライダルウェディング」の スタッフ達が杏奈を歓迎し頭を下げた 真っ白なタイトスカートの制服に お団子頭でみんな同じような顔をしている 「このような良き日に麗しき花嫁様をお迎え出来るのは 私共にとってこの上ない喜びでございます どうぞ本日はすべて私共にお任せくださいませ」 列の真ん中の一人が一歩前に出て もう一度深々とお辞儀をした そして 杏奈があっけにとられているうちに ミラージュのスタッフに中を案内された 狐につままれた気持ちでロビーを進むと 突き当りのそこはなんと 素晴らしいスパだった   「あの・・・・ここは?」   大理石とガラスと鏡の張り巡らされた 広々とした空間を見回しながら杏奈は尋ねた 「たいていの花嫁様は天国に一番近い場所だと おっしゃってくださいます こちらで花嫁様は身を清め 私共の施術を受けていただた後に ウエディングドレスをお召しになっていただきます」 案内係はそう言うと 白い施術服を着た三人の女性を紹介した 「本日花嫁様をお世話させていただきます ミラージュのチェンです」 「イジュンです」 「ウォニョンです」 深々と杏奈にお辞儀をした三人の施術師は三人とも 抜ける様な白い肌にワンレンの黒髪で とても美しかった それから三時間杏奈はアロマオイルの香りに たっぷり包まれて過ごした 淡い照明の部屋には熱帯の花が飾られ 小川のせせらぎのリラックスサウンドが流れている 真っ白いローブに着替えて 全身マッサージを受けているとあまりの心地よさに 早朝早いのもあって眠ってしまいそうになった 「本当に・・・天国の様です いつまでもこうしていたいです・・・」 杏奈はため息をついて施術師に言った 「あいにくマッサージはここまでで 今から韓国式の少し骨格を変える施術を させていただきます こちらは・・・少し・・・ 痛とうございます 」 「え?骨格を変える?」 杏奈は顔を上げた ウォニョンと言う施術師がニッコリ微笑んだ 彼女は本当に美しい 「ハイ! 11時の式典の祭壇前にお向かいになられる時には 海運王の花嫁として最高の状態で いていただかないといけません」 「あの・・・ なにがなんだかわからないのですが とにかくお任せします」 杏奈は頭蓋骨を揉まれながら言った これぐらいの圧迫ならむしろ心地よい   「さすが海運王の花嫁様 逞しゅうございます 」 ニッコリ微笑むとウォニョンは いきなり杏奈の鼻の骨をつまんで 左右に振ってゴキゴキ言わせた そして何か塗られたと思ったら両の 拳で顔面の骨をゴリゴリやられた それから1時間ほどスパ中に杏奈の悲鳴が轟いた
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