chapter 1 血の繋がり

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「主任がどうやってあの社長の元で3年間も 勤められているのか不思議でしかたがありませんよ もう私は1年で根をあげそうです」 くるみは引き出しを開けてキャンディの包み紙を 広げて口の中に入れた それを見た杏奈があきれ顔で言った 「一流の秘書は海運王のボスの癇癪にも ハンサムなお顔にも興味を持たないものよ」 上品なしつらえの広々とした社長室に隣接する 社長秘書課オフィスは 大阪湾の澄んだ青い海を見渡すオフィスの全面窓に隣接するように設置されていた 今はもうすぐ春を予測させる日中の暖かい陽光で 海面はキラキラ光りオフィスの中は暖房をつけていなくても半袖で過ごせるぐらいだ 良い季節になった 最近ではコートが無くても外で 心地よく過ごせる日も多くなってきていた すぐ近くには大阪湾のシンボル西日本一の商業施設 「ワールドトレード貿易センタービル」が見える 全面ガラス張りのこのオフィスからの みごとな景色はそれはとても贅沢だ    杏奈は深呼吸をし 視線を窓辺へもっていった 今はキラキラの海面に杏奈の会社の大型貨物船が なめらかに埠頭に入ってくる まるで模型の様だ この素晴らしい絶景は何度見ても心が洗われる 毎日眺めても決して飽きることはない しかし今はそれどころではない 突然杏奈の目の前で怒り狂った蜂の大群が 唸っているような呼び出しブザー音が鳴り響いた それと同時に社長秘書課オフィス全体に緊張が走った 社長が呼んでいる 「今の聞こえたかしら?」 くるみは椅子から弾かれるように立ち上がると 透明のパーテーションで遮られている 隣の従業員がいる大部屋に逃げようとした   「私が行くわ」 杏奈はタブレットを手に取ると パソコンの画面をスリープにして立ち上がった
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