chapter 4 フェイクな花嫁

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フィッティングはすべて数日前にすませていて この日着るウエディングドレスの候補を 数点杏奈は確認済みだった 確認済みだったにも関わらす 本番直前の今はラック5本分の ドレスが杏奈の目の前に現れた 披露宴用に三点 キャンドルサービス用に5点 写真撮影用、お見送り用の色打掛などずらりと並び その光景はまるでスタジアムでコンサートを するアーティストの衣裳部屋のようだった 施術が終わる頃には 杏奈は軽くパニックになっていた さらにその後ヘアメイクスタッフと スタイリストチームと名乗る 美しいがみんなほっそりしたどこが似通った顔の エイリアンのような美人に囲まれていた 彼女達の前にいると自分がちっぽけに思え 杏奈は唇が震えた 「花嫁様には下着からメイク用品まですべて ミラージュの物をお付けいただきます  さぁガウンをお脱ぎください」 「え・・・でも・・・ 」 ギロリとスタッフ達の目が光った 「お脱ぎください」 「・・・ハイ・・・ 」 まだ施術を受けた顎の骨がズキズキ痛む 観念してこの人達に身を任せることにした 一人のリーダー的なスタッフの目が細くなり 彼女が仕切り始めた ヘアスタイル メイクアップ ネイルスタッフに彼女達は 素早くチームに分かれ息の合った動きは 何年も一緒に仕事をしてきたかのようだ ここにいる精鋭部隊はひとこと言えば 意思が相手に伝わるらしく 「う~ん」はどうやら コーディネイトの やり直しを意味しているようだ 杏奈の顔に色々塗りたくり 大きなブラシではたきかけて土台を作ってから みんなで分かったというようにうなずいてまた シェーデイング作業に戻る 杏奈は襲い来る粉にむせてケホケホ言った アイラインを引かれつけまつげをつけられ 唇に血色の良いピンクで艶々と仕上げられ さらにそこにパウダーを叩かれ グロスまでつけられる 上半身は背中までキラキラするボディジェルを まんべんなく塗られ 鎖骨や胸の谷間までシェーディングされた 今や体の中で何かを塗られていない所は ないのじゃないかと思うぐらいだ
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