chapter 4 フェイクな花嫁

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次にヘアメイクアップチームが登場し 杏奈の髪を複雑な模様で編み込み後ろで纏め キラキラしたモールがついたエクステを何本も 髪に巻きつけられたので杏奈の後頭部が こんもりと盛り上がった そうこうしているうちに ヘアメイクアップは完成し 巨大な三面鏡と赤いじゅうたんが一面に 敷き詰められた試着室に移動させられる 「花嫁様にはこちらを装着していただきます 素材は日本製のシルク、韓国の裏地、 インドのラインストーン イタリアのインナー、 フランスの総レースのベールと 世界各国の最高級品を取り寄せて制作しました」 「それではまずはインナーから 私共がお手伝いさせていただきます 」 「え・・・でもインナーぐらい自分で・・」 ギロリ 「お手伝いさせていただきます」 「・・・・ハイ・・・・・」 杏奈は柔らかいイタリア製のインナーに 高シリコンのヌーブラを装着し 薄いシームレス制のビスチェで死ぬほど 胴体を締め付けられた 締め付けられる度息が止まるかと思った 大勢のスタッフにかしずかれ ここまで来たら恥ずかしさも何もなかった 「さぁ・・・花嫁様 こちらに・・・    」 光沢のあるオーガンジーのたっぷりとした 生地の海の中にスタッフ三人がかりで穴をあけて 杏奈にその中に入れと指示する 杏奈は言われたとおりに 生地の真ん中の穴に足元から入った 三人がかりで重い生地の海と思っていた パニエを装着するのに数分格闘し 腰にベルトで装着される ずっしりと重い花嫁衣装を身に着けて 世の花嫁はみんなこの拷問に耐えているのだろうかと ふと杏奈は思った 芸術作品と言ってもいいほどの 美しいウエディングドレスだった 幾何層かのレースとサテンで仕上げられた身頃には 繊細なクリスタルのラインストーンが これでもかとあしらわれている ドレスの裾にまで流れるようにラインストーンが ちりばめられており それが霧のごとく光をとらえるのだ 「なんて綺麗なの・・・・・ 」 杏奈は思わず信じられない気持ちでスカートの 裾を揺らした その度光がまるで銀河の様に揺れている 「ミラージュのドレスはどれも技術力の高い 縫製スタッフのオートクチュールとして知られ 少なくとも1着300万円からでございます 今回は急を要する事態でしたので わが社のトップデザイナーのドレスをお持ちしました しかし・・・ 少しお直しが必要ですので そのまましばらくお待ちください 」 「お足元はこちらを・・・・  」 それは見たこともない厚底のヒールだった こんな高いヒールは履いたことがなかった 戸惑っている杏奈にミラージュスタッフは言った 「海運王は180センチを超える長身のお方 15センチヒールを履いていただけなければ 釣り合いませぬ 」 「え・・・でも 」 ギロリ・・・ 「お履きくださいませ」 「ハイ・・・・  」 「つま先に重心をかけて歩いてください 踵に重心をかけると転びますよ」
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