chapter 4 フェイクな花嫁

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そして一段高くなっている金屏風の高砂席にいる 杏奈の後ろにはミラージュのスタッフが両端に二人 クノイチの様に潜んでいる 「あの・・・杏奈さん・・大丈夫ですか? もし体調が悪い様でしたら 披露宴もここまでにして― 」 ギロリ 「やめるなんてご冗談でしょう? ミラージュの日本進出の未来が今の私に すべてかかっているんです・・・・ どうか私の事はお気になさらずに・・・ 」 杏奈は会場をニッコリ微笑んで見渡しながら 大和に言った そしてボソリと小さく何やら囁いた 「汗押さえてください」 するとクノイチミラージュスタッフが素早く現れ 杏奈のおでこにパフをはたいて 瞬時でいなくなり そしてまた美しい杏奈が蘇った あまりの素早さに大和は幻を見たのかと思ったぐらいだ ブツブツ・・・・ 「キャンドルサービス動線・・・・ A視点のカメラがあそこと・・・ B視点カメラ・・・        」 ブツブツ言う杏奈の前に ミラージュのドローン二体が宙を飛んで現れた 「大和さん!笑って!」 杏奈が微笑んで大和の腕を組み寄り添う するとドローンから発せられる カシャカシャとまばゆいフラッシュを浴びた そしてケーキカット、キャンドルサービス、記念撮影、 お客様のお見送りなどでお色直しをする度に 彼女はミラージュスタッフと全速力で走った 杏奈の仕事ぶりは 究極の美しく煌びやかなウエディング花嫁を 装うには何が何でも一に体力、二に体力を 思わせる気迫があった
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