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式が始まる前に初めて大和と言葉を交わした
ほんの二言三言だったが
花婿の礼服を粋に着こなした彼は
ため息が出るほど惚れぼれする良い男だった
背が低い杏奈がウエディングドレスの下には
15センチのヒールを履いているので
今日は彼の横に立つととても見栄えが良い気がした
杏奈を覗いた他の家族全員は式場が用意した
ホテルで一泊宿泊するらしく
このホテルは温泉やエステゴルフコースも充実している
すべてのアミューズメントを満喫すると佐奈は息巻いていた
もちろん費用は全額大和持ちだ
家族全員がウキウキと幸せそうだった
姉は小さい頃から優秀で女学校を出た後
あの海運王の秘書として見事玉の輿にのり
女性として一番良い形で出世し
家族に幸福をもたらした
母は幼いころから長女の杏奈を大和撫子に
育て上げ見事玉の輿に乗せた母親として
女としての自分の責務をやり切った満足感で
顔を輝かせている
しかし杏奈だって隅に置けない
正人と婚約していたのに
正人が自分に靡いたら風の様な速さで
海運王と結婚してしまった
いったいどんな手を使ったのだろう
そんな浮かれた家族を置いて
カンナは一人実家に帰った
玄関からリビングに行かず
すぐに二階に上がって行った
行先は決まっていた
幼いころのように足音を立てず
あの頃から入室を禁止された姉の部屋に忍び込んだ
もう何百回も忍び込んでいるのでお手のものだ
姉の部屋の中央に立って室内を見渡した
姉は几帳面な性格上大切なものなどは
綺麗に整頓してしまっている
お気に入りの本
クローゼットには秘書らしい洋服
本人にだけ価値のある宝物で溢れていた
カンナはあるものを探した
あったわ・・・・
クローゼットの中にあった
小さな箱を取り出しそっとあけた
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