chapter 5 豪華客船とワルツ

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・・・・・・・・・・ 予想はしていたものの二人の船室はまさに 海の上の邸宅そのものだった 現実にこのような贅沢な船室があるとは今まで 平凡な生活をしていた杏奈にとって未知の世界だった 広々とした私用のラウンジがあり その奥の二つの部屋に通じるドアがあった 化粧室を備える広々とした寝室にその横には 船の上なのに水も湯もふんだんに出る 金の猫足バスタブの浴室があった 美しい頑丈な窓からはどこまでも青い海が 広がっていた そして杏奈の目に飛び込んできたのは 存在感をあらわにしたクイーンサイズのベッドだった 杏奈は思わず身を固くして 胸の高鳴りを抑えようとした 「心配しなくてもあと二つ部屋があるよ 僕は右奥の部屋を使うから君は遠慮しないで ここを使ってくれ そう思って部屋が沢山ある ラグジュアリー・スイートを選んだんだ 」 杏奈は言葉につまってしまった 何か気の利いたセリフでも言いたかったが どういう訳か言葉が出てこない 「そこに座って 紅茶とコーヒーどっちがいい? 今持ってきてくれたんだ 」 「それじゃ・・・紅茶を・・・」 実際杏奈は喉がカラカラだった 美しい型押し皮に覆われた座り心地の良い ソファーに腰をおろした時は思わず安堵で ため息が出た 腰を気持ちよく圧迫してくれている ジャガード織りのクッションが気持ち良い 「僕はこれから船長やその他関係者に挨拶をしてから 少し会議室で報告会に参加しないといけないから 君はどうか休んでください 今日はとてもよく頑張ってくれた 夕食もルームサービスを頼めばいいよ」 「披露宴で・・・ 食べた食事がまだ残っていて お夕食食べれるかしら・・・」 「僕もそうだよ 」 そういえば彼は沢山食べてあれほどお酒を 飲んでいたのに彼の顔は平静そのもので その黒い謎めいた瞳は杏奈に注がれたがすぐに 目の前のコーヒーに視線は戻った 杏奈は今朝からの結婚式と披露宴で 精も根も尽き果てているのに 彼はまだ今から仕事をするというのか
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