chapter 5 豪華客船とワルツ

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彼はコーヒーを片手に杏奈と向き合った 「なぁ・・・僕達友達になれないかな?」 「友達?・・・ですか? 」 大和の突然の提案に 杏奈が当惑して聞き返すと 彼は微笑んで肩をすくめた 「考えてみれば僕達が友達になれない理由なんて ないんじゃないのかな? だってそうだろう? いずれにしてもこれから半年間夫婦の役を演じなければ ならないのだから・・・・ 何でも話せる友達になるってのはどうかな?」 彼の声は穏やかで思慮深かった 友達という言葉が今の杏奈にはとても素敵に聞こえた 「友達・・・・ええ・・・そうですね・・ とっても良い考えだと思います」 杏奈も同意の笑顔を彼に向けたのに 大和は少し安心した そして大和は少し頭をボリボリかいて 言いにくそうに言った 「すまなかったね・・・・ あの晩・・・・ 君の家の玄関先であんなキスをしてしまって」 大和は瞬時に視線を床に落とした 後悔の念に胸が締め付けられる 「さぞ不安になっただろうね 君が・・・・その・・・泣くほど嫌だったとは 思ってもみなかったんだ・・・」 しばらく待ってみたが 彼女からは大和の謝罪の訂正どころか 何の返事もない やはりそうなのだろうか・・・・ さらに大和は低い声でつぶやいた 「式の時は・・・・・あれは許してほしい いくらフェイクの夫婦でも どうしてもやらなければならない場面だったんだ・・・ でも・・・ もう二度とあんなことはしないと誓うよ」 二人の間に重苦しい沈黙が漂った 「杏奈さん?」 彼女があまりにも沈黙を続けるので 不安になって視線をあげると ソファーの肘掛にもたれてぐっすりと 眠っている杏奈がいた
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