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大和はしばらくソファーで
うたた寝する杏奈をじっくり観察してた
どれほど長く彼女を眺めていても
飽きることなかった
彼女の細部のひとつひとつを見るたびに
新鮮な驚きを感じた
扇のように伏せたまつ毛
鼻も唇も小さい
なのに目だけはアニメのように大きい
流れる液体の様に艶やかな茶色い髪
それに何より普段の澄ました仮面を脱いで
無邪気に眠る顔
安らかな表情をした顔は少女のように幼い
そして彼女はただ静かに
眠っているわけではなかった
時折まつげが震え
唇を開いて不安定な呼吸をし
手の指やつま先が不安定にぴくぴく動いた
時々眉をしかめ何かをつぶやいた
ひょっとしたらまだ夢の中で彼女は
披露宴を続けているのかもしれない
思わず鬼気迫る披露宴の彼女を思い出して
笑みがこぼれた
そして彼女の体を覆っているシャネルのスーツ
自分が贈ったものを彼女が身にまとっているのだと
思うとなぜか男の満足感が心を満たした
普通の女性なら自分が贈ったものは歓喜の表情で
みんな喜ぶのだが
彼女には逆に叱られた
それがあまりにも新鮮でおかしく
そんな彼女に対する自分自身の感情に
大和は大きな驚きを覚えていた
保護欲が大波のごとく押し寄せてくる
彼女をしっかり抱き上げ寝室にむかった
クイーンサイズのベッドにそっと寝かせ
しばらく様子を伺った
・・・・目を覚まさない
今この瞬間彼女はいともたやすく大和の心の中から
あるものを引き出していた
それは優しさだった
思いやりといってもよかった
こんな気持ちになるのはどれぐらいぶりだろう
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