chapter 5 豪華客船とワルツ

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無理もない、よほど疲れていたのだろう この一日で大和は彼女について実に多くを学んだ 彼女はどんなに苦しい状況でも並外れた強さを失わない すこしぐらい逆境に陥ったぐらいで 泣いて自分を見失う様な女性ではないのだ 今日の結婚式をやり遂げた杏奈の気概を 大和は高く評価していた あの人気アーティストのコンサート並みの 披露宴を切り抜けた意志の強さには感激さえしていた ミラージュからの報告によれば 自分達の結婚式や披露宴は 公式サイトのライブ中継及び その後すぐにストリーミング動画再生され 再生回数はもうすでに50万回再生されており 今こうしている間も新記録を更新中だ 初動で目標数値よりもずっと高くブーストが起こった 今日の彼女は本当に魅力的だった 銀河の女王のようであり またはウブな女子学生のような純真無垢な存在だった まさしくミラージュのイメージそのものだった その時彼女がう~んと小さく寝返りを打った あらわになった耳はとても柔らかそうだった 甘い香りが鼻孔をくすぐる 彼女のすべてに興味津々だった 理由などわからないとにかく彼女に惹かれていた 大和は寝ている彼女のおでこにそっと口づけた そして驚いた なんてことだ彼女には手を出さないと言った 舌の根も乾かないうちにこんな事をして しまっている それが無意識だからやっかいだ もしかしたらこれからの半年間の夫婦ごっこは 思ったよりも楽しいものになるかもしれない そう思って彼女に布団をかけ 大和は寝室を後にした
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