7626人が本棚に入れています
本棚に追加
シャッターが半開きになったガラス窓から差し込む光で杏奈は目が覚めた
そしてすぐに不安定な上下する重力と見慣れぬ風景に
束の間自分がどこにいるのかわからなかったが
部屋を見回すうちに記憶がよみがえった
ここは豪華客船の中で自分はハネムーン中だと
思い出した
乱れた髪をかき上げベッドの時計を見ると8時近い
偽装婚の一日目が始まったのだ
あわててベッドから飛び起きた
彼はもう目を覚ましているのだろうか
いくら偽装婚だとしても妻が夫をほったらかして
置いていつまでものんべんだらりと
寝ていられるわけがない
母は一度だって父をそんな風にほったらかしに
したことはなかった
昨日はあのまま寝てしまったのだろうシャネルの
スーツがしわだらけになっていた
あわててリビングに飛び出すと
向かいの彼の部屋の扉が半分開いていた
ノックをしてからそっとドアを開けて見てみると
部屋はもぬけの殻だった
リビングのガラスのテーブルには
大和の書いたメモが残されていた
dear杏奈
おはよう!
君が良い目覚めをしてくれてたのならいいが・・・
朝食はリドデッキ側の「ブルーオーシャン」という
カフェレストランで食べれるよ
僕も一仕事してから行くからそこで落ち合おう
朝食という文字を見て杏奈のおなかがぐぅ~っと鳴った
メモを握りしめたまま急いでシャワーを浴びに行った
浴槽に入ると外国船らしくシャワーのヘッドは
頭上に固定されて雨の様に降りそそぐ
タイプのものだったが
これでは股間が洗えない・・・
みんなどうしているんだろうと考えていると
ちょうどカランの当たりに後から付けたように
ゴムフォースタイプのシャワーの混合栓が付いていた
これなら体の隅々まで洗える
温度も水圧も申し分なかった
大理石の張った浴槽に備え付けられている
ボディジェルは良い匂いで気に入った
最初のコメントを投稿しよう!